
二次相続と一次相続で何が違うのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
二次相続は、一次相続で財産を引き継いだ配偶者が亡くなったときに発生する2回目の相続で、一次相続よりも相続税が高くなりやすいという特徴があります。
ただし、一次相続の段階から二次相続を見据えて遺産分割や生前贈与、生命保険や不動産活用などの対策を行えば、税負担やトラブルを大きく抑えることも可能です。
この記事では、二次相続の基本的な仕組み、相続税が増えやすい理由、二次相続を見据えた対策、対策を考える際の判断ポイントについて詳しく紹介します。
二次相続とは

一度相続を経験した方でも、二次相続が具体的にいつ発生するか、一次相続と何が違うのかは分かりにくいポイントです。ここでは、二次相続の基本的な仕組みについて詳しく解説します。
二次相続が発生するタイミング
二次相続が発生するタイミングは、一次相続で財産を相続した配偶者が亡くなったときです。
父が亡くなり、母と子で父の遺産を相続するのが一次相続。その後に母が亡くなり、母が父から引き継いだ財産と自身の財産を子どもが相続するのが二次相続となります。
また、一次相続から短期間(概ね3か月以内)に二次相続が起こる再転相続や、一次相続の遺産分割が終わる前に起こる数次相続など、手続きの進み具合で呼び方や扱いが変わるケースもあります。
いずれの場合も、一次相続での状況が二次相続の手続きや相続税額に大きく影響するため、次の相続でも慌てないよう全体の流れを意識しておくことが重要です。
一次相続との違い
一次相続は夫婦のどちらか一方が最初に亡くなったときの相続で、相続人は通常、残された配偶者と子どもです。
一方、二次相続ではその配偶者が亡くなるため、相続人は子ども(直系卑属)のみとなり、法定相続人の数が減ります。
その結果、二次相続では一人あたりの取得財産が増えて配偶者の税額軽減が利用できなくなることから、相続税が上がりやすい構造になっています。
こうした違いから、一次相続の段階で二次相続をシミュレーションし、将来の税負担やトラブルをどのように抑えるかの検討が求められます。
二次相続で相続税が増えやすい理由

二次相続で相続税が増えやすい背景には、配偶者控除が使えなくなることや、法定相続人の数が減ることなど、制度上の仕組みがあります。
ここでは、二次相続で相続税が増えやすい主な理由について詳しく解説します。
配偶者控除が使えなくなる影響
二次相続で相続税が増えやすい理由として、配偶者控除(正式名称は「配偶者の税額軽減」)が使えなくなることが挙げられます。
一次相続では、配偶者が取得する遺産が「法定相続分」または「1億6,000万円」のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。
しかし、二次相続ではその配偶者はすでに亡くなっているため、配偶者控除の適用対象となる人が存在せず、大きな税額軽減を使えない状態です。
そのため、一次相続で配偶者に財産を集中させて税金をゼロにするという選択をすると、二次相続では控除の少ない状態で多くの税負担がかかる可能性があります。
こうしたリスクを避けるには、一次相続の段階から配偶者控除をどこまで使うかを考え、子どもにも財産を分けておくなどのバランスを取ることが重要です。
相続人の数が減ることによる基礎控除の減少
二次相続では、法定相続人の数が減ることで相続税の基礎控除が減少します。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で求められ、一次相続では一般的に配偶者と子どもが相続人になるため、控除額も比較的大きくなります。
しかし、二次相続では配偶者がすでに亡くなっているため法定相続人から外れ、その分だけ基礎控除額も600万円下がってしまいます。
基礎控除額の差により、同じような財産額でも課税対象となる部分が増え、累進税率の構造と相まって相続税が高くなりやすいのが二次相続の特徴です。
財産が集中しやすい構造的な理由
二次相続では、財産が一人に集中しやすい構造そのものが税額を押し上げる要因になります。
一般的に多くの家庭では、配偶者控除を意識して母が多くの財産を相続し、子どもは最低限だけを受け取るという遺産分割が選ばれやすいです。
この時点では配偶者控除の効果で相続税はほとんどかかりませんが、母の手元には父から受け継いだ財産に加えて、母自身の財産も合算されます。
その後、母が亡くなった時点で発生する二次相続では、一次相続で父から受け取った財産と母の固有財産の合計額に相続税が課されます。
相続人は子どものみ、基礎控除は少ない、配偶者控除も使えないという条件が重なるため、一気に高い税率区分に入ってしまうケースも少なくありません。
二次相続で相続税が増えやすいのは偶然ではなく、一次相続で配偶者に財産が集まり、配偶者の死亡時にまとめて課税されるという仕組み上の構造によるものだといえます。
二次相続を見据えた代表的な対策

二次相続では、一次相続の決め方しだいで税負担や遺産分割のしやすさが大きく変わります。ここでは、二次相続を見据えた具体的な対策について詳しく解説します。
一次相続での財産配分を工夫する
二次相続を見据える場合、一次相続の遺産分割で配偶者に財産を集めすぎないことが重要です。
一次相続では配偶者控除を使うことで相続税を大きく抑えられますが、その結果として配偶者名義の財産が集中すると、二次相続で高い税率が適用され税負担が高くなります。
そのため、一次相続の税額が最も少なくなる分け方ではなく、一次相続と二次相続を合計した相続税が最も少なくなる分け方を目標にする配分割合を検討するのが望ましいです。
具体的には、配偶者の生活資金として必要な額を確保し、それを超える部分や評価額の高い資産などは将来の二次相続を見据えて子どもに渡しておく設計が有効になります。
複数の分割案ごとに一次相続と二次相続の税額をシミュレーションし、数字で違いを確認しながら家族全員が納得しやすい分け方を選ぶことが重要です。
生前贈与を活用して財産を計画的に移す
二次相続の課税ベースを抑えるには、少しずつ財産を次世代に移しておく生前贈与が欠かせません。
例えば、暦年課税の範囲で毎年少しずつ贈与を行えば、年間110万円までの基礎控除を使って長期的に課税対象となる財産を減らしていくことができます。
相続時精算課税制度を使えば、将来値上がりが見込まれる不動産や自社株などを早い段階で子どもに移し、贈与時点の評価額で相続財産に組み込まれます。
二次相続を見据える場合は、生前贈与を活用し、配偶者が亡くなる頃にはすでに相当額が子どもに移っている状態を作っておくことが重要です。
ただし、相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻れないなどの注意点もあるため、贈与する財産の種類や金額、タイミングなどは専門家と相談しながら慎重に進める必要があります。
生命保険で納税資金を確保する
二次相続で税額が膨らみそうな場合は、生命保険で納税資金を確保する方法が有効です。
例えば、一次相続で配偶者を被保険者とする保険に加入して子どもを受取人にしておけば、配偶者が亡くなったタイミングで現金が入り、二次相続の相続税を納付できます。
税額を減らすだけでなく納税資金をどう確保するかも重要な視点で、死亡保険金には一定額までの非課税枠があるため、実質的には税負担を抑えることにもつながります。
また、保険金は原則として受取人固有の財産としてスムーズに支払われるため、遺産分割協議の結果を待たずに当面の支払いに充てられる点も心強いポイントです。
相続税の配偶者控除に頼りすぎない
二次相続を見据える場合は、相続税の配偶者控除に頼りすぎてはいけません。
一次相続で配偶者に財産を集中させると、その時点では相続税はほとんどかかりませんが、二次相続では配偶者控除が使えず、基礎控除も縮小した状態で税負担が重くなりやすいです。
配偶者控除は短期的な節税にはなっても、長期的な税負担の軽減とは両立しないケースが多いため、一次相続時から意識的にコントロールする必要があります。
配偶者の生活を守るのに必要な最低限以上は、子どもに分けておく選択肢も検討した方が合理的な場合があるため、配偶者の年齢や健康状態も踏まえた冷静な判断が求められます。
$10年以内に連続して発生した場合は「相次相続控除」を活用する
一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合は、「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」という税額控除の特例を活用できます。
相次相続控除とは、短期間に相次いで相続が発生した際、相続税の二重負担を軽減するために設けられた制度です。
一次相続で相次相続人(母など)が納めた相続税額のうち、一定の金額を二次相続の相続人(子どもなど)が納めるべき相続税額から直接差し引くことができます。
特に高齢夫婦の場合、一次相続から数年以内に二次相続が起きるケースは珍しくありません。
一次相続でどれだけの税金を納めたかによって控除額が変わるため、過過去の申告書をしっかり確認し、控除の適用漏れがないよう専門家に確認することが重要です。
不動産の評価や分け方を事前に検討する
不動産は、評価や分け方で二次相続の税額と遺産分割のしやすさが大きく変わるため、事前にどのように分けるかを検討しておくことが重要です。
例えば、土地には相続税評価額を大きく圧縮できる優遇措置がありますが、どの相続人がどの不動産を取得するかで適用可否や減額の幅が変わります。
一次相続の段階から、二次相続では誰がどの不動産を引き継ぐ可能性が高いかを検討しておけば、利害対立が生じるリスクも軽減できます。
また、あらかじめ不動産の評価額や収益性、将来の利用予定を整理し、遺言書や生前贈与、持分の持ち方などを設計しておくことも有効です。
必要に応じて不動産を売却して分けやすい形にしておく、不動産を相続させる相続人以外には現金や保険金で調整するなどの工夫も、二次相続のトラブル回避に役立ちます。
二次相続対策を考える際の判断ポイント

二次相続対策は、とりあえず今の税金を減らすのではなく、家族の状況や財産に合った選択ができているかを見極めることが重要です。
ここでは、二次相続対策を考える際の判断ポイントについて詳しく解説します。
家族構成や年齢差による考え方
二次相続対策を考える際は、家族構成と年齢差の確認が重要です。
例えば、先に亡くなることが多い父が高齢で、母も同じく高齢という場合、父の一次相続から10年前後のうちに母の二次相続が発生する可能性が高くなります。
この場合は、短期間に2回の相続が起きる前提で遺産分割や生前対策を検討する必要があります。
一方、配偶者が比較的若く子どもが経済的に自立していない場合は、配偶者の生活保障を優先し、どの時点でどの程度の財産を誰に持たせるかを考えることが重要です。
また、前妻や後妻の子どもが混在している、再婚で連れ子がいるなどの家庭では、二次相続での分割トラブルを避けるため、夫婦それぞれが遺言書を準備するなどの対策も欠かせません。
財産の種類別の注意点
二次相続は、財産の種類ごとに取るべき対策が変わります。
例えば、現金は分けやすく納税資金に充てやすい一方、何も対策しなければ課税対象額が増えていくため、生前贈与や生命保険の活用などで計画的に移転しておく方法が有効です。
不動産が多い家庭では、評価方法や小規模宅地等の特例が税額に大きく影響するため、最初から子どもに自宅や収益物件を承継させる選択肢を検討した方が良い場合もあります。
また、自社株や投資商品など値動きの大きい資産は、相続が起きるタイミング次第で税負担が変わるため、価格変動リスクも含めて生前にどこまで移すかを検討することが重要です。
このように、財産ごとに評価のされ方や特例の有無が異なるため、どの財産を誰に持たせるかは慎重に組み立てていく必要があります。
相続税がかからない家庭でも検討すべき理由
相続税がかからない家庭でも、二次相続を全く意識しなくてよいとは限りません。
例えば、一次相続では基礎控除額に余裕があり相続税がかからなくても、二次相続では控除額が減るため課税ラインに乗ってしまうケースは少なくありません。
また、二次相続では兄弟姉妹だけで遺産分割を行うことになりやすいため、財産の規模にかかわらず預貯金や不動産の分け方を巡るトラブルが生じるリスクはあります。
特に、自宅や事業用不動産が財産の大部分を占める家庭では、「誰が住み続けるか」「事業を継ぐのは誰か」といった問題が絡むことも多いです。
こうした事態を防ぐためには、相続税がかからない見込みでも夫婦それぞれが遺言書を作成し、生前からの話し合いを通じて誰に何を残すかを明確にしておくことが重要です。
まとめ
二次相続とは、一次相続で財産を引き継いだ配偶者が亡くなったときに発生する2回目の相続です。
一次相続とは異なり、配偶者控除が使えなくなることや相続人の数が減ることから、相続税が増えやすいという特徴があります。
一次相続で短期的な節税だけを優先すると、二次相続で税負担が重たくなることもあるため、生前から相続税を見据えて対策していくことが重要です。
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監修者情報
弁護士法人札幌パシフィック法律事務所
代表 佐々木 光嗣 平成25年札幌弁護士会登録
経歴
- 昭和54年 11月12日生まれ
- 平成10年 北海道札幌北高等学校 卒業
- 平成14年 北海道大学法学部 卒業
- 平成16年 北海道大学法学部法学研究科修士課程 修了
- 平成22年 北海道大学法科大学院 修了(法務博士)
- 平成23年 司法試験合格
- 平成24年 弁護士登録(東京弁護士会 弁護士法人アディーレ法律事務所)
- 平成25年 札幌弁護士会に登録替え
- 平成28年 小畑法律事務所 入所
- 平成30年 札幌パシフィック法律事務所設立
- 令和3年 弁護士法人札幌パシフィック法律事務所設立(法人化)
- 令和6年 税理士業務開始(通知税理士)
メディア掲載・出演歴
- 平成28年12月 財界さっぽろ
- 平成29年03月 HBC「今日ドキッ!」
- 平成29年09月 HBC「今日ドキッ!」
- 平成29年12月 財界さっぽろ
- 令和4年9月 月刊Masters
- 令和5年3月 北海道相続レンジャーセミナー講師
